所蔵版木

『元暦校本万葉集』版木(東京都指定有形文化財)

 塙家が版刻したこの『万葉集』とは、もと神戸の俵屋久左衛門が所蔵していた14冊分を、保己一が文化年間に書写したもの。その後、子の忠宝の時代になって開版することができた。版木の表面に本文が、裏面には朱文字の交合文の書入れがなされている。版木数は75枚。

『徒然草』版木(東京都指定有形文化財)

 保己一の門人・屋代弘賢が校正、清書して開版したもので、文化十二年書写との記録がある。出版は大幅に遅れ、幕末になった。当初「続群書類従」に組み入れられたが、「閑居の友」という本に差し替えて、独立本として出版された。版木数は79枚。

『御江戸図説集覧』版木ほか(渋谷区指定有形文化財)

 橋本玉蘭斎が原図を描き、山崎美成が説明を施し、嘉永六年(1853)に開版した江戸図である。美成は保己一の門弟で、多くの著作を残した学者である。往時の江戸のさまを克明に描きだされた、きわめて貴重な史料といえる。十丁目に渋谷近辺の記載がある。

渋谷区指定有形文化財には、このほか「五行易指南」「古今刀剣正真便覧」「崋山画譜」など、1094枚の版木があり、『群書類従』版木とあわせると、18,492枚を所有しており、世界屈指の版木数を誇っている。