事業内容と歴史
本会は、塙保己一の偉業顕彰の目的から、明治42年に子爵渋沢栄一、宮中顧問官井上通泰、文学博士芳賀矢一、保己一曾孫塙忠雄の四氏により設立され、以来百年の歴史を刻んでいる。
保己一の精神である温故知新(論語・ふるきをたずねてあたらしきをしる)の趣旨に基づき活動するとともに、重要文化財指定の『群書類従』版木の保管、盲人福祉事業、各種啓発事業に努力している。
事業内容
1、『群書類従』版木の保管と摺立て頒布
塙保己一が編纂した『群書類従』の版木(17,244枚)を保管し、一般にも公開している。なお、江戸時代より今日まで需要者には希望に応じ頒布を続けている。昭和32年、重要文化財に指定。版木はほかにも、『万葉集』『徒然草』(東京都指定有形文化財)『御江戸図説集覧』(渋谷区指定有形文化財)などがあり、約2万枚の版木を保管している。
2、塙保己一生誕・忌年大会の開催
毎年、5月5日(こどもの日)に生誕記念大会を、11月に忌年大会を開催し、会員相互の懇親を図るとともに、一般の方々にも参加を呼びかけ顕彰に努めている。
3、塙保己一に関する図書の刊行
現在までに「塙保己一記念論文集」「塙保己一研究」「塙保己一論纂」「和学講談所御用留の研究」などを刊行してきた。また、温故学会機関紙「温故叢誌」を毎年11月に発行している。
4、参観者の受け入れ
版木倉庫内を一般の方にも見学できるよう開館している。また、個人・団体ともに希望に応じて講堂にて講話やビデオ上映を行っている。(要予約)
5、塙保己一に関する諸行事への参画
関係機関からの企画展には、保己一関係の資料や遺品の貸出し、講演依頼の要請に対しても協力していく。
歴史
温故学会100年略年譜
年次 | 事項 | |
明治42年 (1909) | 井上通泰が文部省構内の倉庫に『群書類従』版木が収蔵塙忠雄されていることを発見。塙忠雄(保己一曾孫)が温故会を四谷愛染院内におく | |
明治44年 (1911) | 9月、温故会を温故学会と改称 | |
明治45年 (1912) | 『群書類従』の摺りたてを再開する | |
大正2年 (1913) | 東京帝国大学に『群書類従』版木を温故学会に下付して欲しいとの申し出を行う | |
大正3年 (1914) | 版木保管の倉庫建設を条件に許可される | |
大正4年 (1915) | 東宮職より『群書類従』全巻(666冊)摺りたて下命 | |
大正10年 (1921) | 塙保己一生誕100年祭を愛染院にて開催 | |
大正11年 (1922) | 10月20日 文部省より社団法人温故学会設立認可 | |
大正11年 (1922) | 皇室より『群書類従』ケンブリッジ大学に寄贈 | |
大正12年 (1923) | 塙忠雄死去により、斎藤茂三郎第二代理事長に就任 | |
大正13年 (1924) | 温故学会会館の建設会議を開催 | |
大正14年 (1925) | 会館建設資金募集開始(予定額10万円) 場所を東京府豊多摩郡渋谷町大字下渋谷氷川裏に決定 | |
大正15年 (1926) | 8月、会館建設に着工 | |
昭和2年 (1927) | 3月、会館竣工。7月、開館式を挙行 | |
昭和5年 (1930) | 温故女学院を開校 | |
昭和7年 (1932) | 「温故叢誌」創刊(現在、継続刊行中) | |
昭和12年 (1937) | 4月、ヘレン・ケラー温故学会を訪問 | |
昭和13年 (1938) | 塙保己一銅像除幕式(東京美術学校教授・水谷鉄也氏) | |
昭和16年 (1941) | 塙保己一生誕120年大会を九段会館にて開催 | |
昭和19年 (1944) | 塙保己一銅像供出について理事長が東京都民生局に出頭 | |
昭和20年 (1945) | 5月、東京大空襲を受け、会館内に飛び込んだ焼夷弾を投げ出し、版木は消失から免れた。温故女学院校舎は全焼。戦後、本会は無収入となり、経営が悪化 | |
昭和29年 (1954) | 『群書類従』版木が東京都より「都重宝」の指定を受ける | |
昭和30年 (1955) | 斎藤茂三郎理事長が社会教育功労者表彰を受ける | |
昭和31年 (1956) | 『徒然草』、『万葉集』版木が「都重宝」(現、都指定有形文化財)に指定される | |
昭和32年 (1957) | 『群書類従』版木、国の重要文化財に指定される | |
昭和38年 (1963) | 斎藤政雄が第三代理事長に就任 | |
昭和40年 (1965) | 『群書類従」等の摺りたてを本格的に再開 | |
昭和46年 (1971) | 「塙保己一論文集」発行 | |
昭和56年 (1981) | 「塙保己一研究」発行 | |
昭和61年 (1986) | 「塙保己一論纂上・下」発行 | |
平成元年 (1989) | 「塙保己一の理念と軌跡」テレビ放映 | |
平成4年 (1992) | 『御江戸図説集覧』他、「区重宝」(現、区指定有形文化財)に指定される。 | |
平成5年 (1993) | 塙保己一検校顕彰基金設立 | |
平成8年 (1996) | 塙保己一生誕250年記念大会(大宮ソニックシティ)ビデオ「彫ラレタ記憶」、「塙保己一の生涯」(紀伊国屋書店発行)、塙保己一文化人切手(郵政省)発行 | |
平成10年 (1998) | 会館の改修工事を施工(文化庁・東京都・渋谷区) | |
平成12年 (2000) | 会館、文化庁文化財審議会より「登録有形文化財」に登録される | |
平成13年 (2001) | 埼玉県下にて塙保己一顕彰事業記念行事開催 | |
平成14年 (2002) | 渋谷区制70周年記念式典にて温故学会が渋谷区功労者表彰を受ける | |
平成18年 (2006) | 塙保己一生誕260年記念大会開催 | |
平成21年 (2009) | 温故学会創立100年 | |
平成22年 (2010) | 齊藤幸一が第4代理事長に就任 |